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最初のスーツの生地をもう一度

9月17日
読了時間: 3分

6年のおつきあいになる

お客様が昨日お越しくださいました



最初に仕立てたスーツの生地が今も忘れられない

その生地でタキシードをつくりたい

そんなご相談から今回の話は始まりました



初めて仕立てる一着は

寸法や形だけを決めるものではありません



生地を選んだ時間

鏡の前で確認した姿

完成した日に袖を通した感覚



一着にまつわる記憶は

思っている以上に

長く残るものだと感じます



6年が経っても

思い出していただける生地があることは

つくり手にとってとても嬉しいことです



ただ当時と同じ生地を

使いたいという気持ちがあっても

生地の状況は時間とともに変わります



昨日はその現状を確認しながら

タキシードとして形にするために

何を大切にするかをじっくりお話ししました



最初のスーツにあった魅力を

そのままなぞるのではなく

これから着るタキシードに

ふさわしい一着へつなげていくこと



そこに今回の面白さがあります



同じ生地という言葉の中には

色が好きだったという気持ちだけではなく

光の当たり方や手触り

着たときの安心感まで

含まれているのかもしれません



だから昨日は

タキシードにしたい理由だけでなく

最初のスーツの

どんなところが心に残っているのかも伺いました



その答えを急いで形にするのではなく

今の生地の状況と照らし合わせながら

どこを受け継ぎ

どこを新しくするのかを

考える時間が必要です



オーダーは生地見本の中から

一つを選んで終わるものではありません



目の前にある生地と

その方が覚えている生地の印象

そしてこれから迎える日の目的を重ねて

一着の方向を決めていきます



そのため最初のご相談では

まだ答えを一つに決めなくても構いません



忘れられない理由を言葉にしていくことで

必要な生地や

仕立ての方向が少しずつ見えてきます



タキシードは特別な日のための服です

だからこそ素材の印象だけでなく

どんな場面で着るのか

どんな時間を過ごしたいのか

その一着に何を託したいのかまで

考えたいと思っています



以前つくった服の中に

なぜか手放せない

記憶がある方もいらっしゃるはずです



生地の色や質感

着たときの気分

そのときに会った人や訪れた場所



服は着なくなった後も

記憶の入口として残り続けます



だからこそ昔の一着について話すことは

懐かしむためだけの時間ではありません



次につくる服を

より自分らしいものにするための

具体的な手がかりになります



過去の一着をきっかけに

次の一着を考えることは

決して後ろ向きなことではありません



その記憶を今の自分に

どうつなげるかを考えることは

新しい服をつくる大切な出発点になります



生地の在庫や時期による状況もあるため

思い出の生地で何かをつくりたいと感じたら

まずは早めにお話を聞かせてください



当時の写真がなくても大丈夫です

覚えている手触りや色の印象からでも

一緒に整理していきます



今ある選択肢の中で

その記憶にどう応えることができるのか

そこから考え始めます



6年前の最初の一着が

これからの特別な日のタキシードにつながっていく



その時間をご一緒できることを楽しみにしています





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