ヴィンテージを選び続ける理由を見つける時間
昨日は
長くお付き合いのあるお客様に
以前から希望されていた生地に
近いものを見ていただいた
初めてご来店いただいた時から
これまで選ばれた数着は
すべてヴィンテージコレクションからのものだった
今回は
ご希望に近い生地が入荷したことをきっかけに
あらためて沢山の生地を広げながらお話をした
一見すると
生地を比べて一番近いものを
選ぶだけの時間に見えるかもしれない
けれど実際には
色や柄や手触りだけで
答えが決まるわけではない
なぜその生地が気になっていたのか
今の気分に何がしっくりくるのか
どんな場面で着たいのか
話しているうちに
目の前の生地そのものではなく
お客様がヴィンテージコレクションに
求めているものが少しずつ見えてきた

何度も手に取っていただいたあと
やはりヴィンテージコレクションから
選びたいという言葉になった
それは
最初から決めていた答えを
確認するような時間ではなかった
別の選択肢もきちんと見た上で
今の自分にはこれだと納得できる場所に
戻ってこられたのだと思う
オーダーの面白さは
選択肢が多いことだけではない
選択肢を前にして
自分が何を大切にしているのかを
整理できることにもある
もちろん
洋服屋の側が
一方的におすすめを伝えるだけでは
その答えにはたどり着けない
こちらが見ていることを伝え
お客様が感じていることを聞かせていただき
その間にある違和感も含めて確かめていく
その会話が噛み合った時に
言葉にしきれていなかった希望まで
自然に形になっていく
昨日はスーツについての
相談から始まった話が
気づけばコートの話へと広がっていた
予定していた一着を
急いで決めるためだけなら
そこまで話は広がらなかったかもしれない
けれど
じっくり話したからこそ
次に作るべきものの輪郭まで見えてきた

服を作る前に必要なのは
答えを急ぐことではなく
お客様と洋服屋の直感が
重なる場所を見つけることだと思っている
波長や空気感という言葉は
曖昧に聞こえるかもしれない
それでも
お互いが伝えたいことを伝え合い
同じ方向を見られた時にしか
生まれない納得がある
その納得があるから
生地の選択は
単なる素材選びではなくなる
一着を着始めた後の時間まで想像できる
自分のための選択になっていく
ヴィンテージコレクションを選び続ける理由は
生地が古いからでも
希少だからでもない
その人が大切にしたい感覚と
その時に出会った一枚の表情が
重なったからだと思う
昨日の時間を通して
洋服屋としてもっとも大切にしたいのは
その重なりを見逃さずに
一緒に考えることだと改めて感じた
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