The My Wayが大切にしていること 第十三回 一着には記憶が残る
長くこの仕事をしていると
何年か前にお仕立てしたスーツと
久しぶりに再会することがあります
メンテナンスだったり
サイズのお直しだったり
新しい一着を作る時に
以前のスーツを着て来てくださったり
そんな時
僕はその一着を見ながら
仕立てた当時のことを思い出すことがあります
この生地最後まで迷ったな
この裏地
お客様がすごく気に入ってくださったな
この一着を作った頃は
こんな話をしていたな
不思議なもので
服を見ると
その時の記憶が蘇ってくることがあります
きっとそれは着る人にとっても
同じなのだと思います
初めて大きな仕事を任された日に着たスーツ
結婚式で着た一着
お子様の入学式で着たジャケット
大切な人と会った日に締めたネクタイ
服そのものは何も話しません
でも
その一着を見るだけで
あの日の景色や
その時の気持ちを
思い出すことがあります
だから僕は
服は単なる物ではないと思っています
着れば着るほど
時間が重なっていく
少しシワが入ったり
生地が身体に馴染んだり
新品だった頃とは
少し表情も変わっていく
でも
その変化も含めて
その人だけの一着になっていくのだと思います
もちろん
新しい服には
新しい服の良さがあります
でも
何年も着て
いろいろな時間を一緒に過ごした服には
新品にはない魅力があります
昨日
完成した日がゴールじゃない
とブログを書きました
その理由の一つが
ここにあります
完成した瞬間には
まだ何も刻まれていない一着に
着る人の時間が
少しずつ重なっていく
そしていつか
その一着を見た時に
「あの時 着ていたな」
と思い出す
そんな服を
一着でも多く仕立てられたら
僕にとって
これほど嬉しいことはありません
一着には記憶が残る
だからこそ
長く着たいと思える服を
これからも
仕立てていきたいと思います
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